2025.7.6
少し脇道にそれてしまいました、ツイーターの倍音構成についての説明がボケております。全帯域スピーカーを先に書くべきでした。ツイーターの再生領域は楽譜に書かれるドレミファの基音よりはみ出る部分、高次倍音と超音波領域倍音が再生出来ます。分割振動を起こす可能性が少ない構造、材料ほど倍音構成の正直な再現が出来ます。名人芸による振動板の調整は別として、理屈だけで考えてみたらダイヤモンド振動板が現時点で最高なのかも知れません。基音の出ないツイーターより基音が中心で再生する中音、全帯域スピーカーについてお話するほうが理解が早いと思います。ではスピーカーの歴史で倍音構成の正しい再現をすることは考えていなかったのでしょうか?どうもそうでは無くて漠然と分割振動を少なくした振動板なら倍音構成の忠実再現は出来ると考えられていたように思います。分割振動は倍音を振動板部分で変化させる要素が有る、分割振動を少なくすればするほど倍音構成の変化は無いと考えて努力されてはいたようです。
全帯域スピーカーでは振動板を硬くするほど良いと言っても、ツイーターのように振動板面積が小さくないので硬い材料、金属やセラミックでは重くなって能率が悪化するし、材料の鳴きによる倍音構成の変化が有ります。ツイーターのようには行きません。材料を追いかけるより振動板の分割振動を少なくすることを優先してきました。楕円スピーカーという変わった形の振動板ですが、コーン紙を円形にするより楕円にするほうが分割振動の点で目立つクセがやわらぐと考えた結果です。確かに楕円スピーカーには名作が結構有ります。EMI,テレフンケンなどの欧米のユニットが有名で素晴らしいものが沢山有ります。もちろん楕円だけが音の秘密では無くて名人芸による結果なのですが。コーン形状を変えるのと似たもので、ボイスコイルが円の中心に有るのでは無くて、少しずれた位置にあるオブリコーンというものが日本に有ります。最初のモデルの詳細は解りませんが後年ビクターが製品化していました。話題にならなかったからそれほどの効果が無かったのでしょう。オブリコーンも楕円コーンも手法の一つで有り、万能薬では無いからです。
コーン紙を硬く、たわみが少ないものにしょうとする方法にリブを表面や裏面につけることが有ります。たわみのモードを変えるためコルゲーションを付けたり、コーン紙に凹凸を付けてたわみにくくして、分割振動を分散させようとすることも良く見られるテクニックです。これまた名人芸無しでは倍音構成を理想化出来ません、やはり万能薬的テクニックだけでは世界的名器には遠いように思えます。凸凹にすると倍音構成は規則性の無い複雑なものになりがちです。ドラム缶の上蓋を金づちで叩いて凸凹にした楽器が有ります。この楽器はオーケストラの中には入れません。理由は非直線の倍音構成を持つ楽器だからです。表板が凸凹の西洋音楽の楽器は思い当たりません。やはりすみわけが必要です。リブやコルゲーションもコーンの凸凹も努力は解りますが、何もしないまっ平なコーンの方が音が素直で歯切れ良い音がするのも確かです。振動板の表面が複雑なものは意図しない限り複雑な倍音構成となります。意図して複雑にしたものは意図した倍音構成となります。ローサーという名器が有りますが単純なリブだけの平らなペーパーがまるで生楽器のような再生音を出します。ヴァイオリンやギターの製作者が非常に好きなユニットです。倍音構成もトランジェントも優れているからです。いずれにせよスピーカーユニットを作成するには材質より?楽器の製作家のような感性が必要なのでしょう。スピーカーは科学の産物では無くて楽器と同じく芸術作品なのかもしれません。
紙製のコーンの分割振動を嫌い、複雑な分割振動の出にくい樹脂製コーンも登場しました。有名な例ではロジャースのBBCモニターLS3/5Aが有ります。ところが樹脂の固有音を嫌いやわらかいダンプ剤?が塗布されています。ソフトドームツイータと似ていますね。LS3/5Aとしては成功したのですがやはりコーン紙?名人芸の倍音構成調整?が無いからテレフンケン、シーメンス等の欧州名器レベルまでは到達出来なかったのでしょう。
入手可能な紙コーンスピーカーの倍音構成を変化させる方法としてはコーン紙表面にガムテープや皮を貼り付ける方法、もちろん倍音構成は変化します。しかし音の改善はまず期待出来ません。ラッカーを塗ったり、ダンプ剤を塗ることも99%改悪になり、改善は無理でしょう。楽器にはこのような柔らかい塗布剤や後付けの材料が音を良くする例は有りません。発音体の振動を抑制することでは能力を出し切れません。
原点に帰り、コーン紙の材料を普通の紙で密度、厚さ、コルゲーションなどを変えて100種類くらい試作してみたらどうでしょう。分割振動の正直な再現が可能な作品が出来る可能性は有りますね、百に一つ出来る奇跡も無いとは言えませんが?過去に多くのスピーカーメーカーが試みている手法ですが結果はどうでしょうか?カメラマンが連続で何百枚も考える間もなくシャッターを押す、一枚でも芸術的な作品が生まれる可能性は?この手法と同じでまず期待は出来ません。スピーカーも倍音構成の忠実な再現能力を考えると理論的開発方法では難しく、絵画的手法、即ち感性による芸術的アプローチが必要なのは間違い有りません。それほどに偉大な演奏家の残した音楽は分析不可能な複雑な倍音構成になっているからです。その倍音構成を忠実に再現する道具がスピーカーなのですから楽器、いや楽器以上に大変な課題だと言うことでしょう。
オーディオでは安易に原音再生と言う言葉が使われますが原音再生は不可能です。音楽演奏はその場限りの時間芸術だからです。原音に近い再生を行う、言い換えます、原音に近い演奏を再生するにはスピーカーの可聴帯域はもちろん、上下の可聴帯域外の倍音構成が整っていない限り無理です。どうか思い出してください、拾ってきた音の良い木材の楽器ではアンサンブルが無理な理由と同じです。
続く
2025.6.26
肝心のドレミファの基音を発声する中音スピーカーについて述べる前に。一昨日書いたダイヤモンドツイーターについての情報が入りました。ダイヤモンドツイーターは以前にかなり高価な英国製のブックシェルフスピーカーが採用しましたが特にそのツイーターが優秀とされたことは無くて、今回のダイヤモンドツイーター、後付けは最近の2000万円以上のスピーカーシステムが採用、そして同等のツイーターが単体で売り出された、なんと200万円以上?らしい。それが後付けで今まで無かった効果を生み出したとのこと。それを聴いた方の何人かがすぐ入手されたとか?
まあプーアマンの私には何のコメントを出してもヒガミにしか聞こえないのですが、書いた以上。でも褒めたんですからお許しください。美術館に展示されるクラスの絵画はそれこそ億の値段がつく画はいくらでも有ります。布に油絵具で描いたもので原価は?AIは急速に発達しているので人間を追い越している部分は既にたくさん有る、しかし芸術的な才能に目覚めて億の価値を描くことが実現するのか?考えるだけで怖いです。でもまだそんなことは起こらない間に書いておきます。もちろんこのダイヤモンドツイーターを採用した超高価なスピーカーシステムは聴いたことが有りません。このスピーカーの開発手法は最近のスーパーカーと全く同じだと感じます。職人芸、芸術家が手掛けるのでなく可能な最先端の材料、技術で性能を上げる、現代だから可能な方法、また市場が有るから開発製造可能ですね。オーディオもスーパーカーと同じになってきたのか?スーパーカーは誤解されている方はたくさおられるでしょうから、書きますがF-1やルマンのようなレースで成績を残したモデルでは無いのです。電気自動車など動力元はモーターで馬力はいくらでも上がります。バッテリーの容量しだいです。ガソリン車は排気量という制約がレースのクラスでは有り無限に大きくすることは出来ません。だから名人芸はレーシングカーには大切だがスーパーカーには無制限のコストをかけられます。大きな違いでです。
言い換えればレーシングカーには名人芸、職人技、芸術の要素が根底に有ります。スーパーカーには芸術の要素は必要無いと言えば言い過ぎ、少ないと言い換えます。
絵画、それは楽器の世界と通じます。遥か昔のクレモナで個人が生み出したコストは殆ど木材のストラディバリウスやガルネリデルジェスです。前回書いたJBLのツイーターやデッカリボンツイーターはまさに芸術の産物です。タンノイオートグラフ、デッカデコラ、JBLパラゴンなども価値は美術品だと言えますね。
ダイヤモンドツイーターがそれらに劣るとは言ってません。大きな期待を個人的に持ってます。ただしスーパーカー的発想で生み出されたものですのでJBLやタンノイの高音ユニットと比べて性能をうんぬんするのは馬鹿げています。このダイヤモンドツイーターと比べて同じ音質の他の材質の振動板を持つツイーターの登場を待ちたい思いです。
どうもくだらない事を書いたようにも思えます。お許し下さい。次回は最終の重要項に近づけるかな?
2025.6.24
(7)元の演奏(再生する録音の電気信号)の倍音構成をそのままスピーカーでの再生音として出力可能なのか?
ここではっきりしてきたのは西洋音楽を複数の楽器にて合奏するには音階、調律、倍音構成、および一般的で無いが可聴帯域外の超低音、超高音までが西洋音楽と言う制約範囲内ではしばりが有ると言う事実、数学的に説明可能な物理現象が支配するという重要な点です。オーディオではかってこのような複合音の領域については触れられることは有りませんでした。音を量的には捉えるが、重なる複合音とは考えてはいなかったということになります。可聴帯域外についても先述したようにオーディオでは可聴帯域外も音楽再生には重要要素であるという位の認識です。結果として可聴帯域外までレスポンスを伸ばすためのスーパーツイーターの追加、録音では可聴帯域外でのレスポンス向上となってきました。可聴帯域外の情報が再生音の倍音構成をさらに正確にするためであるとの言及は見られません。可聴帯域とは単音での耳の能力を測定した結果であって、実際の音楽演奏が倍音を含めた重音で構成されるという事実を見落としているとしか思えません。音楽の録音再生には可聴帯域の再生能力があるだけでは不充分なのです。可聴帯域外までの記録、再生が出来るかどうかの違いでは有りません、可聴帯域外までもが正確な倍音構成を保たなくてはならないという重要な意味が隠れています。
次はスピーカーが単音の再生は簡単だが、重音である音楽の再生を可能とするには簡単でない具体的な理由を書いて行きたいと思います。ここでお詫びするのはこのテーマで書いてきた文章は私の思い付きを文にしてタイプしているので誤字、脱字、ダブりなどが多く、校正をしていないので酷い文章になっているのことをお許しください。終わりまでそんな感じです。本にするにはかなり時間をかけて校正しないとどうにもなりません。すみません、どなたかにお願いしたい思いです。
最初に書きましたが楽器もスピーカーも発音体を振動させて音波を発生する構造は同じです。しかし、目的はかなり違います。楽器は西洋音楽あるいは、西洋音楽とは共存出来ない倍音構成をその特徴として持つ発音体です。スピーカーはいろいろの倍音構成の楽器、またそれら楽器の音波の重なりで発生する基音、倍音そして単音では耳に聞えない倍音構成までもを変形することなく音波に変える発音体で無ければなりません。現実にスピーカーが基音、倍音構成を変形するとこなく再現しているでしょうか?ラジオやテレビの小型スピーカー、低音専用ユニット、スーパーツイーターだけを考えると限定された帯域では基音、倍音構成に忠実では有りません。オーディオ用の全帯域スピーカーシステムなら忠実なのでしょうか?
以後スピーカーと言うとあるレベル以上のオーディオ装置専用の音楽再生スピーカーシステムを意味します。何度も書いてきましたがスピーカーの一般的な特性、主に周波数特性を満足にすれば音楽再生が可能と考えられ開発、製造されてきました。高いレベルの演奏、複雑な倍音構成の楽器に対してはそれらを再生して満足出来る音質を持つものが優秀とされているのも事実です。なぜ優秀なのかは技術的特徴として述べられていますが倍音構成が忠実というのは有りませんでした。音楽関係の著書で、倍音再生能力が不充分なスピーカーは音楽再生目的には向かないと書いた記述を若い時に読んだ記憶がぼんやりと有りますが、残念ながら、今は探し出すことが不可能です。オーディオとは無関係な外国の文献だったと記憶していますが定かでは有りません。
スピーカーの開発では振動板の特性、音速、ヤング率、硬度、形状などが研究し尽くされています。主に形状、音速を理想化して振動板の分割振動を少なくしょうとしてきました。分割振動とは入力した信号を音波に変える時に発生する不要な振動、すなわち倍音を発生します。言わば偽物の倍音なのです。分割振動が有ると忠実な音楽再生が不可能と解かっているから意識して開発されてきました。分割振動による偽倍音を少なくするだけでは駄目で、完全に無くするかあるいはパターンを変えないと忠実な音楽再生は不能とは考えない、結果としていろいろの音質がスピーカーがに有るのです。解っているのに満足の行かない結果が現実のスピーカーであると考えてください。分割振動を少なくする策の実践としては振動板がたわまない、即ち硬いことも理想につながります。硬いだけで重いのでは能率は下がるし、音速が遅いのもダメ、それなら理想は硬くて速いこと、ダイヤモンド?と考えられたのがダイヤモンドツイーターまさに理想のツイーターですね。ツイーター領域での分割振動がとても少なく正直な倍音、帯域外倍音構成の再現は理論的に期待出来ます。一部のオーディオマニアの方の間では画期的な音質向上が有るツイーターと話題になっているようです。友人のYさんは実際に聴かれ感激したと言っておられました。残念ながら私は触った経験、聴いた経験が無いのですがかなり期待しています。スーパーツイーターの追加は音楽再生にとっては有害とのタイトルで始めたのにどうしたら良いのでしょうか?これは例外として期待しているのでお許しください。今回のテーマでは理論的に一致してきたからです。残念なのはその価格です、ツイーターだけで何十万円では届かない価格のようではどうしようも有りません。それに近いもので分割振動に有利なもので登場を期待したいです。この方法とは正反対のアプローチのツイーターがソフトドームです。振動板を柔らかくして分割振動しない?ようにする。確かに不自然な倍音が無く一聴正直ですが楽器の質感、材料の音が鈍くなるので倍音構成は許せても音質が安物になりがちで音楽、演奏の種類が限定されます。ダイヤモンド以外で試してみたいのはイオンツイーターです。分割振動する振動板が無く電気振動が直接音波に変わります。これも価格が高いものばかりだし、危険感有り、イオン臭が心配です。親しい友人がずっと愛用されていましたので聴いた経験有り、少し異次元の感じ有り、多分振動板のクセ?が無いこと、良いも悪いも楽器の元の材質の音の表現力が不足した感じです。有名なJBLの075ホーンツイーター、特にマグネットヨークが金色のが良いとか、大型のJBLをお使いの方が好んで使われます。これも分割振動を考慮してなのか振動板がリング状、ジャズのシンバルの音の再現がこれ以外では考えられないと絶賛が有るのに、クラシック専門の方にはこのシンバルの音が弦の音にいつも被ると聞こえます。ジャズとクラシックは倍音構成が違うし、好みも異なります。それならジャズには向かない、シンバルが鳴らないツイーターは有るのですか?有ります、デッカのリボンツイーターです。まさに両極端のホーンツイーターです。とりわけホーンが大型のデッカは素晴らしいです。他のリボンツイーターは良く知りませんが今まで聴いた国産、海外ともにこのクラスには及びません。ツイーターについてはその他コンデンサーやコーンが有りますが特に理論的に優れたものは無いようです。コンデンサータイプは駆動力の問題なのか、材質の問題なのか?力感が現実的で有りません。マイクではコンデンサー型の名品が多数有るのに不思議なことです。コーン型でも分割振動を技で制御した名品のツイーターは有ります。
高音用スピーカーが先になりましたがやっと肝心のコーンタイプの振動板について考えるところまで来ました。高音用だけでは楽器のファンダメンタルが無いから倍音構成の説明がしにくいのです。中音、全体域用のコーン型を例にして話すのが良いと考えます。再生音を大きく変えるのは中音部分ですから、前述の分割振動が大きく関係します。音楽の再生能力の差は中音スピーカーの正確な倍音構成のような気がしませんか?コーン紙の材質、ドイツ製や和紙、合成樹脂の違い、リブの入れ方、表面の補強、ダンプ剤の塗布、楕円形や複数ユニット、ホーンはどのように倍音再生に関わるのか?
続く
2025.6.22
スピーカー再生での倍音の話はもう少し先で掘り下げますが、実際の生演奏では先日のタンノイオートグラフクラスのような音の奇跡は有るのでしょうか?私の少ない経験ですが、いくつか有ります。ウイーンフィルメンバーによる音楽会、トヨタマスタープレイヤーズという名のコンサートが全国の数都市で毎年行われています。トヨタ自動車が後援しているウイーンフィルの主要メンバーを招待して行う室内オーケストラコンサートです。親切な友人が毎回チケットを手配して下さり毎年のように楽しませて頂きました。ウイーンフィルでないと聴けないあの絹のような音をとても楽しみにしていたものです。オーディオ装置がよほど調子が良くないと、これがウイーンフィルの音だと断言出来る音は出ません。家内を誘って聴きに行った年が有ります、どうしても生のウイーンフィルを聴かせたかった、新婚旅行でウイーンに出かけた時から何年過ぎたのか?いつもは始まってすぐに、ああこれがウイーンフィルの音だと思う喜びが有ります。しかしこの年は、あれ?と訳が解からない、どうしたのか?いつもの音で始まらない。しばらく考えておりましたが、5分くらいしてやっといつもの音に戻りました。
下手だとか、荒いとかでは無くて、いつもの音では無い。そしてその後は問題無く満足してコンサートは終わりました。帰ってじっくり考えましたがそれはどんな音だったのか?考えてみると別におかしな音ではなくいつも聴いてる、ただし別なオーケストラの音です。ごく普通の日本の高いレベルのオーケストラの音です。そのごく普通のオーケストラの音は最初から最後まで、また別のオーケストラだったりしても、特に特徴としての音は見つけられません。Tオケ、Kオケ、Dオケ、Sオケと聴いただけで、この音だと指摘出来る特徴が無くて、どのオーケストラもブラインドでは区別出来ません。私の感性と耳が悪いから無理なので、特徴を掴める方はたくさんおられるとは思います。ところがウイーンの音だけは私でもなぜかすぐに解るのです。
考えてみれば、最初の5分間は言ってみれば日本のオーケストラと同じ音だったのです。そして5分くらいしてウイーフィルのいつもの音に戻りました。そして最後までその音が持続しました。あのメンバーの持つ楽器はウイーンフィルが管理?している楽器ですから楽器自体の倍音構成も素晴らしい仕上がりのものだと想像できます。単に名器の集まりでは無くてウイーンの価値観を共有した楽器です。しかも複数のメンバーが鳴らす時には奏者一人一人自分の音を管理します。一人が他のメンバーの出す音を聴いて自分の音を出します。楽器ですから奏者により音は変わります、倍音構成が変化するわけです。また複数のメンバーの出す音ですから、互いに干渉して別な倍音構成も生まれます。全てのメンバーの価値観が一致して初めてあのウイーンフィルの音が生れるのだと思います。ではなぜあの日だけの最初の5分が起こったのか?私の推理ですから当たっているかどうか?ホームグラウンドの演奏でなくて、慣れてないホールであるのでメンバーが最初はホールの音に戸惑ったのでは無かったのでしょうか?同様の現象は世界的に有名なドレスデンシュターツカペレや他の特徴有るオーケストラでも確認出来ると思えます。
ここで言いたいのはウイーンフィルが一流で他はどうこうと言う気は全く有りません。音楽はメンバーが未熟でも真剣さ、真面目さがあれば、アマチュアオーケストラでも素晴らしい演奏が出来ます。それが音楽で技術レベルと演奏価値はまったく別なのです。倍音構成がずれていても表現が価値に結び付きます。それが音楽芸術です、優劣は有りません。言いたいのはこれほどに倍音構成というのは大切なことだと言いたいのです。前に話していた、和楽器のソロコンサートで笛の倍音がズレていることで演奏の特長、表現が価値を決めるのだから。倍音構成とはこれほど大切なものだと言いたいのです。
次はスピーカーが音楽演奏で最も大切な倍音構成を再現出来るかどうかを具体的に考察してみたいと思います。倍音構成に絶対的な法則は無いので、元の演奏に忠実な倍音再現というテーマで考えてみたいです。果たして物理的に可能なのでしょうか???
続く
2025.6.20
最近出会えた素晴らしいスピーカーが有ります、まさにパラダイスが出現しました。
タンノイオートグラフオリジナルキャビネット入りです。ただしオリジナルの箱入りで開発者自身が整音したとしか思えない完成度で、一瞬信じられない、楽器の名器レベルを思い浮かべる再生音でした。明らかにシステムで左右のバラツキ?細部仕上げの違いが有るらしいペアです。タンノイオートグラフはいくつか聴いた経験は有りますが、オリジナルBoxはこれが初めてです。このモデルを入手した友人から聞いた話ですが、前オーナーは確かめるためにフロントグリルを外したら、左右の箱で全面に空いていた穴の数が違うのに気づいたそうです。想像ですがなんの不思議も有りません、このレベルで整音しょうと思うと左右同じになる方がおかしいと思います。一般的には左右ペアでスピーカーユニットが揃うほど優秀とされるのに何ということでしょう。ヴァイオンリンの名器では、同じ音がする楽器は存在しないのと全く同じことです。幸運にも私の友人は博物館クラスの芸術品を入手したのでした。タンノイを日本のオーディオ界で有名にした、五味康祐さんが出会われた時の幸福感は大変なものだったのが理解できました。ユニットだけを同じ構造のBoxに入れるのとBoxの響きまでを含めて仕上げたオリジナルモデルは全く違うものでした。オーディオでもまさに楽器の名器と同じことが起こるのですね。
続く
2025.6.19
残念ながらこの自作楽器ではクラシックのオーケストラでメンバーとしては合奏無理です。
ただしプログラムが現代音楽ジャンルだったり、客演やコンチェルトでもこの楽器がソロ楽器として抜きんでた演奏価値が有れば、ソロとして共演の可能性はゼロでは有りませんが合奏は物理的に無理なのです。古典クラシックではジャズや現代音楽で使われる和音が制限されています。ジャズでは制限は有りません。現代音楽ジャンルのクラシックもかなり和音の表現は自由です。以降ここではクラシックというと現代音楽を含まないクラシック、古典クラシックを指しているとお考えください。ソロでライブコンサートや少人数の演奏なら何も問題は起こりません。音楽の種類は色々有るので当然です。無理なのは他の楽器に混じってアンサンブルする、ハーモニーを醸し出すためにのは、倍音がオーケストラの楽器とは異なるからなのです。この自作楽器をオーケストラでの演奏を可能にすることは出来ないのでしょうか?出来る可能性は有ります。マリンバという巨大な木琴が有ります。この音板はただの木材です。選ばれた素材を人の耳で削って音程だけで無く倍音まで調整されているのです。機械で測定して仕上げてはもいくら精密に仕上げても初心者用に過ぎず、演奏家は手を出さないでしょう。倍音の調整は耳で仕上げる必要が有るのです。このマリンバの音板と同じように拾ってきた木材も西洋音階の楽器にすることは物理的に可能だと考えます。ただしマリンバの歴史で残ったノーハウが必要なので、現実的にはどうでしょうか?レーシングカーと同じく一品物は危険を伴います。
この自作楽器はオーケストラでは使えませんので代わりに和楽器の笛、何種類もあるので詳しくは私も知りませんが横笛で代表的なもので、フルートの代わりにオーケストラで使えるでしょうか?残念ながらいくら名人作の笛でも高音の音階が西洋音楽とは違います。中には特有の音色のために管の内側を絞って倍音の配列をずらした楽器もあると聞いています。物理的に西洋音階では無いし、倍音配列も非直線になっている別な世界の楽器だったのです。誤解の無いように願います、各世界の優劣は有りません。別世界として扱わなければならないということです。水と油の関係と言っても言い過ぎでは無いくらいです。何故かオーディオではスピーカーにこの二つ、いや二つ以上有るのですがこの事実を区別することなくアンプもスピーカーも音楽ジャンルを選ばない、万能さが優秀とされているようです。しかし音楽家はもちろん、プロオーディオや音楽に入り込んだオーディオマニアはオーディオでもそれぞれの世界に合う機器を区別しています。JBLはジャズ向き、マッキントッシュもジャズ向き、タンノイはクラシック、マランツ7はクラシックというのは定説ですね。この定説についてはそれぞれのブランドのモデルすべてが当てはまるわけでは有りません。いくつかの各ブランドの代表作、例えばタンノイオートグラフやJBLハーツフィールド、パラゴンなどがクラシック、ジャズの再生で特に素晴らしい再生を可能とした結果です。現行モデルではその定説が当てはまるとは言えないと感じます。私の乏しい経験ですが普及モデルではJBLのスピーカーではクラシックで好ましい再生可能なものは出会えませんでした。一方タンノイではジャズがクラシックより鳴りにくい傾向は有りました。
メーカーとしてはジャズ専用、クラシック専用と、それぞれに音楽専用と言うのはオーディオの現状を考えるとマーケッティングの点で難しいところでしょう。ではタンノイとJBLの代表作のどちらが正しい音楽再生スピーカーでしょうか?どちらもが正し過ぎるスピーカーだから起こる結果が、それぞれの専用になってしまったと考えたいです。芸術には人間の五感に感じる以上の素晴らしい世界を描きたいという永遠のテーマが有ります。絵画も音楽もその素晴らしい世界を描いたものがたくさん有ります。まさにパラダイス、桃源郷の世界です。タンノイもJBLものどちらも、天才が現実以上の再生音、生より良い音を実現させた結果だと考えられませんか?このような芸術品、オリジナルスピーカーをお持ちの方は幸せです、二度と現れることの無い非量産品なのです。絵画なら博物館、美術館入りは間違い有りません。クラシック、ジャズとそれぞれのパラダイスは一つとしての完成された世界に統合出来なかったのか?という疑問ですが答えは簡単です。何度も書きましたがジャズとクラシックは和声、倍音の構造が違うからです。ここで現代音楽やジャズとクラシックの融合、ガーシュインの世界を持ち出さないで下さい。たくさんの音楽専門家が議論しても答えの出せなかった疑問ですから。音楽理論を理解して頂きご自分で答えを探す課題かも知れません。では具体的に天才の作品であるスピーカーは?問題の無い限り書いてみたいのですが問題の有るテーマですから皆さん、ご自分でお探し願います。特に現行販売品については書くのは無理ですが、驚くほどのスピーカーも外国製品、現行品で有りますからご安心ください。
続く
2025.6.11
(6)倍音構成について考慮されていないスピーカーでは演奏の正直な再現は不可能である。
音楽再生の為に理想的なスピーカーとは何か?の結論を出す前に良い楽器とはどんなものかについて書いてみたい。倍音の理解については音楽理論を学ばれた方には理解が難しいものでは無いが、倍音についての話は音楽理論を知らない方にも理解して頂くために書いているのだからどうすれば良いのか?音楽理論とは難しそうな名前の学問だがやはり名前どおり難しいと思う。これまで会った演奏家や音楽家はこれについて理解して無い人が殆どだったから音楽専門家で無いオーディオマニアが何の事かさっぱり分からないのは当然だから気にしないで良い。これまで会った音楽関係の専門家、高いレベルのアマチュア演奏家でも音楽理論を理解していた方は100人に一人もおられなかった。音楽専門の学校で学ばれた方であっても内容を理解してたとは思えなかった。
しかし大げさに考え諦めて頂く必要は無い。音楽の歴史の中でバッハにより確立された理論がそのベースであるから、それがくつがえる事は将来も有りえない絶対的な理論である。一言で言えば複数の音波が重なって鳴るときに、音波同士が重なると新たな音波が発生して異なった音に聞える現象である。人間の耳の聴力に関係無く(一部関係した脳内音楽現象は有るがそれはややこしくなるから別にして)起きる二音以上の干渉の物理的な現象だ。そしてこの現象は量子力学の世界で扱われる宇宙の成り立ちで良くでてくる波と全く同じように説明可能だ。楽器の演奏は演奏家が耳でモニターしながら操作する、二音以上の基音や倍音で感情を表現する芸術である。
ここで大事なのは音波の重なりで起こる干渉、それは数学的に説明出来る現象なので偶然や奇跡の立ち入るすきは無い。音楽と無縁な数学者でも説明出来る現象が音楽演奏なのだ。
すなわち音楽演奏は数学的な理論で説明可能な音波の重なりが生み出す新たな音を含む楽器の音である。基本の音ドレミファで五線に書かれる音程が二つ、例えばドとソの二音であっても、実際は楽器の音や声であればドとソにはそれぞれに倍音が有るから倍音と倍音の干渉、倍音と基音の干渉以外に演奏者の揺れや空気の乱れ、騒音などで現実の演奏は複雑になり、二度と同じ音は生まれない。楽器が増えたり、質が変わったり、演奏者のミスが有ったりして二度と同じ結果は無い。録音すれば残ると考えたいが残念ながらタイムマシンでも無い限り不可能な尊い現象が名演奏なのである。
では楽器についてで有るが、山歩きで偶然に硬い音のよさそうな枝を見つけた。似たかたちのものが数本有ったので拾ってきて長さを調整して木琴を造った。信じられない位に良い音で音程もピアノのような、音程はオンチでは無いが少しオモチャのピアノの音に似ている。
この楽器?でクラシックのオーケストラの中に混じって演奏出来るのだろうか?
また友人のライブコンサートで私が飛び入りで単独演奏しても良いのだろうか?
この答えを即解答できる方ならこれまで長々書いてきたスピーカーが簡単には音楽再生出来ない理由をすでにご自分で完全に理解されていると考えます。
続く